2014年9月25日木曜日

観戦レポート 日本人選手3人出場の バンコクFC×クラビFC TPL第26節

バンコク在住の会社員によるタイ・サッカープレミアリーグの観戦レポートです。

今回はDivision1(タイの2部リーグ、以下D1)のバンコクFCとクラビFCの試合(2014年8月16日、第26節)です。

今日の試合はバンコクFCのホーム、バンモットスタジアムで行われました。このスタジアムがあるのはバンコクからチャオプラヤー川を越え南西に位置しているチョームトーン区バンモット地域で通りを挟んだ向いにはタイムス紙の高等教育ランキングではタイで唯一400位以内に選ばれたキングモンクット工科大学(351位-400位)があります。



両チーム合わせて3人の日本人がプレー

バンコクFCは1998年に設立されたバンコク・ブラボーFCを前身としており、オーナーはタヤ・テプスワンという地元では有名な政治家で監督はパイロー・ボーウォンワッタナーディロックであったがこの試合二日前に解雇され、セルビア人のミロシュ・ヨクシッチがこの試合から指揮を執ることになった。メインスポンサーはM2F(Monday to Friday)というネットを主体としたメディアであり、過去に在籍した選手には過去にスパンブリーFCでプレーし、現在チョンブリFCの馬場悠企選手や、オーソットスパーでプレーした山本寛幸選手も在籍していました。





クラビFCは2009年創立というタイ南部でプーケットの近くであるクラビ県を本拠とする若いチームでメインスポンサーはエア・アジアとピピ・カバナホテル、このホテルは映画「ザ・ビーチ」で有名になったピピ島にあり、経営者は県の有力政治家としてもその名を知られているソムキット・キティトーンクン(Somkiat Kittitornkul)氏でチームのオーナーでもある。





クラビFCにはラヨーンユナイテッドから移籍した前田遼平選手が在籍しており、先発メンバーに登録されていました。またバンコクFCも橋本卓選手と能登正人選手が先発と両チーム合わせて3人の日本人がプレー、海外でこのような試合を毎週のように観られるのはタイだけでしょう。

バンコクFCは橋本選手がセンターバックのポジション、能登選手はサイドハーフのようなポジション取りでワイドに展開、本来の主戦場であるセンターではなく右に左に位置を変えて攻撃参加を試みるが、得意ではない役割のようで上手く味方との連携が取れません。対するクラビFCは前田選手が守備的なMFとしての位置取り、攻撃は9番のブラジル人、エリヴァウドが最前線に張り付いています。

**攻めながらも先制されるバンコクFC**<span class="fs-1"></span>

試合開始直後からバンコクFCは速い展開でボールを廻して行くのですが、クラビの守りは堅くなかなか崩すことが出来ません。

逆にクラビはカウンターで得点を狙いに行くのですが、橋本選手を中心としてそれを許しません。





そんな中クラビFCが先手を取る。21分、左サイドから展開しバンコクFCの守備の間隙をついてクロスが出されそれをペナルティエリア手前に走って来たエリヴァウドが受け、一度反転してシュートしたボールはゴール右下に決まります。

しかし、失点したバンコクFCはその直後の26分右サイドの混戦からごからやや右寄りに走りこんで来た橋本選手にバックパス、そのボールを橋本選手はワントラップし、右足でペナルティエリア内にふわりと浮いた球を出すとオフサイドギリギリのタイミングで飛び出した21番エカシットが右足で押し込みゴール、橋本選手の完璧なタイミングのアシストで同点となる。



能登正人選手

さらに29分バンコクFCはペナルティエリア内で40番ワニットがシュートをするもクラビDFに当たりノーゴール、バンコクFCは相手陣内で主導権を握るが前田選手の献身的な守備もあり追加点を阻止します。

そして前半終了直前の47分にクラビFCは右コーナーアーク(コーナーキックを蹴る場所)付近からのフリーキックからゴール前にいた31番ブリキナファソのジャン・マイケルが頭で合わせて方向を変えゴール、再びクラビが2-1とリードして前半は終了。

後半開始直後からバンコクFCが攻めるのですがお互いラフプレーが多くなり、選手同士がもみ合いになるなどタイサッカーの悪い面が出始めます。

さらにリードしているクラビの選手による時間稼ぎのプレーも増えたことにより度々試合が止まる場面も見られました。





同点にされることを恐れて徐々に守備的になって行くクラビFC、能登選手を初めさらに攻撃を仕掛けて行くバンコクFC、両チームともにシュートは打つものの決定的なチャンスを作ることが出来ず時間は過ぎていきます。

70分には単調な攻撃に変化を付けるため両サイドを動き回っていた能登選手を交代させます。

終了間際に追いついたバンコクFC

どちらも得点することはできずそのまま試合終了かと思われた94分、バンコクFCはセンターサークル付近からDFの選手がクラビのゴール前にロングボールを出したところ、ペナルティエリア内で9番のヴァルチ・ジュニアとマークに入ったクラビのDF2人が交錯して倒れたのをファールと判断しペナルティキックが与えられ、それをヴァルチ・ジュニア落ち着いて決めて2-2の同点として試合は終了。





バンコクFCは監督が交代したばかりでしたが戦術理解度はともかく、それなりに戦えていたと思います。ただし、他の選手もそうでしょうが、能登選手をはじめ本来のポジションで使われていないことなどが今後の課題でしょう。

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タイプレミアリーグ 能登正人 橋本卓 前田遼平

2014年9月18日木曜日

JとTPLにおける得点ランキングから見えること

バンコク在住の会社員によるタイサッカー情報、今回は助っ人外国人についてです。

下記の図ですがTPL(タイプレミアリーグ)とJ1リーグの得点ランキングです。名前とチーム名はここでは重要ではありません。ですから名前やチームがまったく分らなくても大丈夫です。

ちなみに1位のヘベルチという選手、実は元Jリーガーでザスパ草津やベガルタ仙台でプレーした経験があり、日本ではJ1、J2あわせて2年で5得点しか出来なかったのですが、タイではどうどうの1位、これが即Jリーグとタイのリーグの実力差、つまりJで活躍できなかった選手でもタイでは十分通用する=タイサッカーリーグのレベルが低いということではありません。



ポイントは何かというと背景が青いのが外国人選手、白いのが自国の選手(TPLはタイ人、Jリーグは日本人)を表しています。なんとTPLはランキング10位以内にタイ人が1人もいません。(5位の下地選手はタイではもちろん外国人です)1人もいないということは少なからず驚かざるを得ません。

そしてこちらはJ1の得点ランキングですが、7点以上取った選手13人のうち外国人は5人、日本人はなんと8人もいます。




こちらはJ2の得点ランキング、8点以上取った選手15人のうち外国人はたった5人、ここからわかることはタイのプロリーグにおいては攻撃に関する外国人への依存度が異常に高いということです。

このようなデータを出すと黎明期のTPLと成熟してきているJリーグとは違うと言う意見や、また現在のタイプレミアリーグは資金が豊富で(この件に関しては都市伝説のレベルです)Jリーグより良い条件で外国人を取れるからと言う方もいるかも知れません。が、下記の表を観て頂ければそうでないことがわかります。

Jリーグが始まった1993年~94年はバブル崩壊後とは言え、40歳になり衰えはあったもののジーコ(鹿島アントラーズ)を始めイングランドのゲイリー・リネカー、(名古屋グランパス)ラモン・ディアス(横浜マリノス)、サルヴァトーレ・スキラッチとドゥンガ(ジュビロ磐田)、レオナルド、ジョルジーニョ(鹿島アントラーズ)などどれもワールドカップ優勝経験者が3人、準優勝経験者が1人、得点王が2名と名だたる大物が在籍していました。もちろん獲得資金は現在のタイプレミアリーグとはまったく比較ならないほどの金額です。そんな中でもやはり日本人が得点ランキングに入っていることがわかります。



ランキング上位は外国人に譲ってはいるものの得点における外国人の依存度は現在とほとんど変わりません。

タイのサッカーでは主に中盤を省略してゴール前にボールを集め得点能力の高い外国人に託すというのが未だに主流で、特に足の速い選手やフィジカルが強く、少ないタッチでゴールを量産出来る能力の高い選手が相手チームの前線へのプレッシングとか中盤でのゲームメイクやパスのつなぎと言った能力より重視されます。

日本からJの有名な選手がタイに来ても過去の実績やテクニックに関わらず重陽されないことがままありますが、このあたりにその原因があるかも知れません。事実、あるチームに居た中盤でパスセンスやドリブル能力に秀でた選手がほとんど使われず退団して行ったことがあります。つまり戦術としてそういった選手を必要としない戦術が主流のようです。

ここ数年は日本人の監督が誕生し、現在では1-3部まで合わせて4人の日本人監督が就任して戦術面での改革が期待されていますが、明確な監督のビジョンがあってもチームによってはタイ人のヘッドコーチが絶大な力を持っており、それまでのやり方を変えようとしないこと、また選手の基本戦術に対する価値観を変えるには1-2シーズンでは難しいという側面があるということです。
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